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元探偵が日常をだらだらとテーマに沿って書き綴る。旅行記になるのか、体験記になるのか、それはこれからの秘密だ。


by atasakura

奇妙なアルバイト体験記

こんにちは。

それでは久しぶりの日記です。

今日は夏ということもあり、ちょっと怖いお話。
その手の話が苦手な人はスルーしちゃってください。

あれは今から数年前の事でした。

俺の日記を読んでくれてる人なら知ってると思いますが
俺の知り合いにK田さんという経歴不詳の謎の人物がいました。
K田さんは俺に不可思議なバイトを紹介してくれたり、謎の人脈をお持ちだったり
理解しずらい部分が多い人でしたが、俺に頼みたい事があると唐突に言ってきたのです。

少し渋い表情をした俺に気付いたのか、K田さんが言う。

K田「そんな嫌そうな顔するなよ。ちゃんと謝礼だすしさ」

俺「でも、K田さんの頼みはろくな目に遭わないじゃないですか」

K田「考えすぎだって。楽しい思いもしてるだろ?」

確かにK田さんからの依頼は、普通に生活していれば
経験できないような体験ができるものが非常に多い。
そういう意味では非常に楽しいが、ろくな目にあわなかったりする。

命の危険やら、社会的に致命傷を喰らいそうなものから、単に笑えるものだったりと様々だ。

俺「どうせやる羽目になるんでしょ?」

K田「なんだよ。嫌ならいいんだぜ?ただし、この間に壊した車の弁償を・・・」

俺「・・・わかりましたよ。やればいいんでしょ。やれば」

過去に俺が彼の依頼を引き受けた際に、壊してしまった車の話を持ち出す。

K田「やっぱり話が早いね。義理堅いやつは」

それを世間では脅しという事に早く気付いてくれ。
内心でそんな事を思いながら、どんな事をやらされるんだと緊張がとまらない。

俺「ちなみに何をやるんですか?」

K田「簡単な事だよ。荷物を知り合いに届けて欲しいんだ」

俺「え?それだけ?」

K田「そうだよ。簡単だろ?」

ウ ソ ダ 。

この人が俺に頼みごとをしてくる時は、ろくな依頼じゃないはず。
その運ぶ荷物がまともじゃないか、危険があるかに決まってる。

俺「その荷物の中身はなんですか?違法性のある品とかですか?」

K田「そんなわけないだろ。俺は犯罪者じゃないんだぜ」

軽く肩をすくめながら、K田さんが答える。

K田「ただし・・・中身は教えられないけどな」

俺「どうしてですか?」

K田「そりゃ、お前。プライバシーってやつだよ」

にやにやと笑みを浮かべながら、楽しそうに言い放つ。
違法性がないとしても、どうせろくなもんじゃないんだろうな。

K田「あ、そうそう。中身は決してみるな・・・とは言わない。
1度だけなら見てもいい。ただし、2度は見ちゃ駄目だ」

俺「え?見ていいんですか?」

K田「あぁ。1度だけならな」

俺「へー。でも、1度見たら、2度見る必要ないじゃないですか」

俺が答えると、K田さんは口元に笑みを浮かべながら答える。
心なしか、その笑みは、ちょっと不気味な感じがした。

K田「そうかな?1度見たら、2度目が見たくなるんだよ。ソイツはな」

俺はK田さんの話に頭をひねった。
見ちゃいけないといわれるのなら分かるけど、1度だけなら見てもいいとはなんとも不思議な話。
1度見たら、何回見ようが変わるものじゃない気がするんだけど。

俺「なんで1度だけなんですか?呪われるとかそんな話ですか?」

俺が笑いながら、K田さんに問いかけると、真顔でこう答えた。

K田「呪われたりするわけないだろ。そんな非現実的な話はないよ」

俺「ですよねぇ」

K田「単に死ぬだけだよ」

俺「へ?」

自分で言うのもあれだが、間抜けな声が出た。
な、なんとおっしゃいましたか。アナタ。
死ぬとか言いませんでしたか?

ていうか、やっぱり違法性があるんじゃねーか。
                  ・ ・ ・
K田「冗談だよ。冗談。単なる嗜好品さ」

あんたが言うと冗談に聞こえないんですけど。
俺はそう呟くと、差し出された荷物を受け取り、
受け渡し先の住所と連絡先を聞いて、そのまま届け先に向かう事にした。

届け先は、都内某所の住宅街の一角にある普通の一軒屋だった。
特に怪しげな雰囲気もないし、怖そうな人が出てくる家でもない。

インターホンを押すと、住人らしき女性が現れた。

俺「すいません。あたーんと申します。K田さんより、
こちらに届けるように言われた品をお持ちしたのですが、F島様はご在宅でしょうか?」

女性「F島なら外出中です。大変申し訳ありませんが、1時間後に出直していただけますか?その品は、私がお預かりするわけにはいかない品物ですので」

俺「・・・それでは、また改めます」

気になる。中の品物はなんだろうか。
身内らしい人なのに預ける事すら出来ない品物とはなんだろう。

1度だけは見てもいいと言ってたしな・・・・

う~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん。

悩むぜ。

ちなみに、この荷物は見た目は20cm四方くらいの桐の箱を
風呂敷で包んであるのだが、持つとそれなりに重さがあり、中はまったく想像もつかない。

俺は近場にある喫茶店に入り、F島さんとやらの帰りを待つ事にした。
本当に1時間で帰宅するんだろうか・・・延々と待たされたら、たまらない。

俺は注文を済ませると、テーブルの上に荷物をおき、暇つぶしの小説を読み始めた。
すると、何やら異様な臭いがするので、目を上げると、置いた荷物から何かが染み出している。
風呂敷が濡れていて、やや黒味のある水のようなものがテーブルの上に広がっていく。

俺「な、なんだこれ・・・」

俺は、ティッシュで慌てて、テーブルの上に広がった黒い水のようなものを噴いた。
異臭がするが、そんな事は言ってられない。
俺は荷物を手に取ると、会計を済ませて、そのまま店を出た。

怪しげな液体がこぼれだした箱を目にして、ますます中身が気になりだす。

もしかして、中身が壊れて何かが出たのだろうか。

それとも・・・。

俺「中を見てみるしかねーよな」

俺は近くにある神社に赴くと、その境内で風呂敷の包みを解いた。

桐の箱を縛る紐を解き、箱の上側にある蓋に手をかける。

ごくり・・と唾を飲み込む音が聞こえる。

俺「い、いいよな。開けちゃって・・・」

一回は見てもいいと言われたし、もう引き返せない。
高まる緊張感を抑えて、俺は蓋に手をかけると、そのまま持ち上げ、中を覗いた。

次回に続く。
by atasakura | 2008-07-31 15:49 | 奇妙なアルバイト