K田さん事件簿①-6
2007年 10月 29日
こんにちわ。
それでは前回の続きです。
背後から近寄る不気味な呼吸音。
後ろを振り向こうと思うのだが、なぜか振り向けない。
別に特別な事ではなく、自分自身が恐怖心に包まれているからだった。
ゴクリと唾を飲み込む音がはっきりと耳まで聞こえる。
携帯をゆっくりと下ろし、後ろを振り向こうとした瞬間だった。
腰よりも上の辺り、胸よりやや下の背中に、何か冷たくとがった物が押し付けられたのだ。
衣服を通した肌に触れる冷たい感触が色々と俺に想像させる。
「だ・・・誰っすか」
「シュー・・・シュー・・・」
返事はない。
「なんか背中に当たってるんですけど」
自然と声が掠れ気味になるのは言うまでもなかった。
今までにも何度か危険な目に合う事もあったけど、
やはり死という言葉が頭を掠める時ほど怖い時はないのだ。
「俺をどうするつもり?」
精一杯の勇気を振り絞り質問してみる。
「シュー・・・シュー・・」
相変わらず返事はない。
コイツは喋る事が出来ないのだろうか。
「悪いんだけど、背中に当ててるものを離してくれないかな?」
俺がそう告げた途端に、背中にチクっと微かに痛みが走る。
どうやら、答えはNoという事らしい。
そのままお互いに動く事なく5分くらいが過ぎた。
いい加減に、緊張感を持ったまま、硬直状態でいるのは疲れる。
俺のそんな気持ちを敏感に察したのか、肩が軽く前に押される。
そのまま歩けという事なのだろうか。
俺が軽く一歩前に踏み出すと、再び背中に痛みが走る。
どうやら、それが正解らしい。
俺はゆっくりと、ゆっくりと前に進みだした。
相変わらず背中には何か冷たくとがったものが充てられている。
背後の存在が気になるが呼吸音と、頭部に当たる息から
俺よりも身長が高めの人物だというのが分かる。
こんな時にアクション映画の俳優なら、格好良く背後の人物を攻撃して
その正体を判明させるところだが、現実はそんな風に上手くいくはずもない。
俺はただの素人なのだから。
「後ろを向いてもいいかい?」
俺がそう言いながら、振り向こうとすると、手で頭を押さえられて
強制的に前を向かせられたかと思うと、軽く背中を蹴り飛ばされた。
どうしても後ろを向かせたくないらしい。
玄関まで来たところで、急に肩を抑えられて動きを止められる。
すると、そのまま動くなと言うかのように手で指示をされた。
それから1分ほどそこにいただろうか。
肩越しに手書きで書かれた紙が目の前に示された。
そこには、汚い字で「ここから出て行け。そして二度と戻るな」と書かれていた。
「無理だと言ったら・・許してくれないよね?」
再び背中にチクリと痛みが走る。
何をされるか分からない状況なので、この場は素直に従う事にした。
俺はそのまま振り向かないで、玄関のドアを開ける。
正体を見るのは、このチャンスしかない。
俺はドアの外に出た瞬間に背後を振り返った。
だが、そこには、すでに相手の姿はなかった。
軽くため息をつくと、俺は携帯を取り出し、K田さんに連絡をした。
それでは前回の続きです。
背後から近寄る不気味な呼吸音。
後ろを振り向こうと思うのだが、なぜか振り向けない。
別に特別な事ではなく、自分自身が恐怖心に包まれているからだった。
ゴクリと唾を飲み込む音がはっきりと耳まで聞こえる。
携帯をゆっくりと下ろし、後ろを振り向こうとした瞬間だった。
腰よりも上の辺り、胸よりやや下の背中に、何か冷たくとがった物が押し付けられたのだ。
衣服を通した肌に触れる冷たい感触が色々と俺に想像させる。
「だ・・・誰っすか」
「シュー・・・シュー・・・」
返事はない。
「なんか背中に当たってるんですけど」
自然と声が掠れ気味になるのは言うまでもなかった。
今までにも何度か危険な目に合う事もあったけど、
やはり死という言葉が頭を掠める時ほど怖い時はないのだ。
「俺をどうするつもり?」
精一杯の勇気を振り絞り質問してみる。
「シュー・・・シュー・・」
相変わらず返事はない。
コイツは喋る事が出来ないのだろうか。
「悪いんだけど、背中に当ててるものを離してくれないかな?」
俺がそう告げた途端に、背中にチクっと微かに痛みが走る。
どうやら、答えはNoという事らしい。
そのままお互いに動く事なく5分くらいが過ぎた。
いい加減に、緊張感を持ったまま、硬直状態でいるのは疲れる。
俺のそんな気持ちを敏感に察したのか、肩が軽く前に押される。
そのまま歩けという事なのだろうか。
俺が軽く一歩前に踏み出すと、再び背中に痛みが走る。
どうやら、それが正解らしい。
俺はゆっくりと、ゆっくりと前に進みだした。
相変わらず背中には何か冷たくとがったものが充てられている。
背後の存在が気になるが呼吸音と、頭部に当たる息から
俺よりも身長が高めの人物だというのが分かる。
こんな時にアクション映画の俳優なら、格好良く背後の人物を攻撃して
その正体を判明させるところだが、現実はそんな風に上手くいくはずもない。
俺はただの素人なのだから。
「後ろを向いてもいいかい?」
俺がそう言いながら、振り向こうとすると、手で頭を押さえられて
強制的に前を向かせられたかと思うと、軽く背中を蹴り飛ばされた。
どうしても後ろを向かせたくないらしい。
玄関まで来たところで、急に肩を抑えられて動きを止められる。
すると、そのまま動くなと言うかのように手で指示をされた。
それから1分ほどそこにいただろうか。
肩越しに手書きで書かれた紙が目の前に示された。
そこには、汚い字で「ここから出て行け。そして二度と戻るな」と書かれていた。
「無理だと言ったら・・許してくれないよね?」
再び背中にチクリと痛みが走る。
何をされるか分からない状況なので、この場は素直に従う事にした。
俺はそのまま振り向かないで、玄関のドアを開ける。
正体を見るのは、このチャンスしかない。
俺はドアの外に出た瞬間に背後を振り返った。
だが、そこには、すでに相手の姿はなかった。
軽くため息をつくと、俺は携帯を取り出し、K田さんに連絡をした。
by atasakura
| 2007-10-29 16:36