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元探偵が日常をだらだらとテーマに沿って書き綴る。旅行記になるのか、体験記になるのか、それはこれからの秘密だ。


by atasakura

初体験

そういえば、以前の会社でのお話。
俺が働き始めて1年が過ぎた頃に、社内のある部門を看てみないかと
当時の上司にお前も独り立ちする時だからと突然言われたのです。
話を聞くと、その部門は管理者がおらず、管理されていない状態で
あまり仕事が上手く回ってるとは言いがたい部署らしくて、
俺をそれを管理して、改善して欲しいというのが仕事の内容でした。

いわゆる昇進という奴ですが、ぶっちゃけ仕事内容しか聞かされてません。
上司はめんどくさがりな人なので行けば分かると説明を省きやがりましたからね。

そんなわけで初めての部下を持つ事になりましたが、嬉しいけど緊張しますよね。

どんな人が部下に付くのだろうか。部下は5名だと聞いたけど
男の人なんだろうか、女の人なんだろうか。
俺より年上の人なのか、年下の人たちなのか。
優しいのか、厳しい人たちなのか、部の雰囲気はどうなのか。

そんな風に色々と考えちゃったりするんですよ。
俺が誰かの面倒を見るというのは、今までにない経験でしたから
前日の夜は興奮して意味もなく眠れなかったのを覚えています。

そして出社初日。

眠い目をこすりながら、下の人たちと上手くやらねばと
今後のアクションプランなどを考えて、
早く部下と馴染もうと意気込んで出社したのです。
もちろん部員5名の名前と経歴などは頭に叩き込んであります。

「おはようございます!」

俺が元気良く、部屋のドアを開けると、部員が3名しかいない。
まだ就業時刻ではないから、別に構わないんだけどさ。

俺は用意された自分の席に座ったけど、部内に漂う異様な雰囲気。
なんかね、雰囲気がちっとも明るくないし、空気も弛緩してないの。
緩みっぱなしとかじゃなくて、負け犬臭が漂うような部屋なんです。

おまけに就業時間を過ぎても、残り2人がきやがらない。

「あのー・・鈴木さんと、今泉さんは?」

やる気なさそうに爪切りをしている事務員の黒部さんに声をかける。

「さぁ?連絡ないから、今日も休みなんじゃないすか?」

「え?無断欠勤?」

「平たく言うとそうですね」

「いや、それマズイでしょ。連絡したの?」

「特に。この部署は休む時は、連絡しないで休むのが基本なんで」

「マジすか」

俺の驚きの声を無視するかのように、黒部さんは続ける。

「はい」

うわー・・・なんだこの部署。
社会人として無断欠勤なんて、あるまじきだろ。
社内調査表には、そんな事は書いてなかったぞ。

仕方ないので、俺が2人に連絡するも、連絡は繋がらず。
とりあえず3人に挨拶しようとしたが、軽くスルーされました。

どうなってんだ、この部署は。

仕方ないから、まずは仕事内容を把握するために
残りの3名、黒部さん、青木さん、橋本さんを招集する。

「あのですね。みなさんがしている仕事内容を具体的に教えて欲しいんですが」

「えー。どうしてですかー」

部で一番若い橋本さんが口を尖らす。

「いやね。部がどんな仕事をしているかは大まかには知ってるよ。
だけど、詳細な内容は部員の人じゃないと
仕事のやり方とかわからないじゃない?
だから把握しておきたくてね」

「めんどくさいですよー」

「じゃ、マニュアルとか仕事内容はドキュメント化はされてるの?」

「されてないですー」

「そう・・じゃ説明してもらえないかな」

「でも、今日はもう時間ないんで」

時間がないというが、時計はまだ13時。
終業時刻まで、まだ4時間以上はあるはずなんだけど。

「え?まだ時間あるでしょ?」

「今日はー。料理教室の日なんですよー。3時からなんですよね~。だからもう帰りたいんですけど~」

微妙に語尾を延ばす話し方にイラつきますが、ここは我慢。

「早退するの?仕事は遅延なく勧められてるの?」

「大丈夫ですよー。」

怪しい、本当に仕事してるのか怪しい。
てか、この部署はどうなってんじゃ。

「あ、そういうわけなんで帰りますね~。おっさきでーす」

とか言ったと思ったら、本当に帰りやがった。

俺が驚いて呆然としてると、最年長の青木さんが呟く。

「早く慣れた方がいいですよ。ここのやり方に」

あ、頭が痛い。

仕事を改善するより先に、この部員達の
人としての教育をしない事にはどうにもならん。
その日はくたくたになり帰り、俺の上司に実態報告をしました。

「あぁ。頑張ってくれよ」

「あの・・どうして、あんな状態な社員を雇ってるんですか?」

「色々と事情がある。ちなみにな、改善するだけじゃなくて、彼ら部員の機嫌を損ねないようにしてくれよ」

「え?どうしてですか?」

「お前に伝えてなかったけど、あの5人は全員が取引先のお偉いさんのご子息達だから」

すべて謎は解けた。

「は・・はぁ・・・」

駄目社員な上に、機嫌を損ねず、改善をしなくてはならない。

なんだ、この無茶苦茶なプロジェクトは。

そして次の日。



















全員が無断欠勤しやがった。


俺の受難は続く。くぅー。
by atasakura | 2007-10-06 07:00 | 雑記