元探偵が日常をだらだらとテーマに沿って書き綴る。旅行記になるのか、体験記になるのか、それはこれからの秘密だ。


by atasakura

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こんにちは。

それでは前回の日記の続きです。

とりあえず簡単なあらすじ。
K田さんから、謎の箱を渡されて、それを届けるバイトを引き受けたが、
1度だけなら覗いてもいいと言われて、
箱の中身が気になり蓋を開けてしまった。
覗いていいのは1度だけと言われたけども、果たして・・・。

俺は恐るおそる箱の蓋を開けて、中を覗いた。

「・・・何もない?」

覗いた箱の中には何も入っていませんでした。
何やらどろりとした黒っぽい染み出た液体のようなものが
箱の底に少し見えるだけで、他には何も入ってなかったんですよ。

俺は思い切り慌てましたよ。
預かり物なのに、中には何も入ってない。
もしかしてどこかで無くしたのかと思いましたが、
箱も今まで一度も開けてませんでしたし、それはありえない。
もしかしたら、あの液体のようなものが、固形化されていて
暑さとか何かで溶けちゃったのかとかそんな事を想像しました。

とりあえずK田さんに連絡を取らなくちゃと箱をしまい、
慌てて電話するも繋がらない。
※この当時はあまり普及はしていませんでしたが、携帯は存在してました

「この肝心な時に・・・」

とりあえず自分を落ち着けると、
箱の中身について思い返してみたんです。
最初から中には何も入ってなかったんじゃないかと思いましたが
明らかに箱だけと比べると重みが全然違うので、それはありえませんでした。

まるで消えるように忽然と箱の中身は姿を消してしまったんです。

中を見てないから、本当に中が存在していたのかは確認が取れないけどね。

「さて、どうしようか・・・中身がないのに届けようもないし、素直に説明した方がいいんだろうか」

独り言を呟きながら俺は蓋を閉じて、箱を包みました。
箱の中身は僅かな黒い液体のみで、他には何もないし
渡された時より、重みが全然変わってしまっているわけなんです。

「まいったなぁ・・・」

俺は頭を抱えながら、箱を手に持って移動しようとした時に異変はおきた。
その箱をK田さんに渡された時と同じ重さに戻ってるんですよ。
別に計ったわけじゃないから、
まったく同じ重さかどうかなんて分かるはずもないけど
明らかに蓋をあけて中身を確認した時に比べるとだいぶ重くなってる。

(あれ・・・なんだろう・・・)

不思議に思い、俺は再び箱を手から離すと包みを外し蓋に手を掛けた。
その時に唐突にK田さんの言葉が脳裏をよぎる。

見 て い い の は 一 度 だ け だ 。

箱に掛けた手が蓋を開ける事を躊躇する。
だけど、中身を確認しない事には、急に重くなった原因が分からない。

俺が迷い、躊躇していると「ぬちゅ・・・・」と箱から音が聞こえた。

「な、なんだよ。今の音・・・」

耳を澄ますが、同じ音は聞こえない。
箱の外側を見ても、液体はもう漏れておらず乾いている。

中を見てみたい衝動に駆られる。
中身がない箱から聞こえた音の正体はなんなのか。

見たい。たまらなく見たい。
自分の中で命取りとも思える好奇心がうずきだす。
その好奇心で何度も痛い目にあっているのに我ながら懲りない男だと思う。

必死で好奇心を抑えながら、俺は箱を手に抱えて、歩き出した。

余計な好奇心で、痛い目に合うのはもうたくさんだしね。
それなりに時間も過ぎたし、そのまま届け先の家に向かう。
俺が玄関で呼び鈴を押すと、1人の男性が現れた。

俺「あの・・・K田さんに運びを頼まれたあたちゃんです」

男性「あぁ、君がそうなのか。そうか、彼に代わりを頼まれたのか、うん。そうか。ならば大丈夫だろう」

その男性は自分に問いかけ、何かを納得したかのようにうなずいている。

男性「この炎天下の中、荷物をわざわざ届けてくれたんだ。上がってお茶でもどうだい?」

何やら予想外の展開に戸惑いながらも、
K田さんの知り合いだし、機嫌を損ねたくない。
俺は素直にお言葉に甘える事にして、男性の自宅へとあがった。

男性「そうそう。その箱の中は見たのかい?」

俺「いえ。見てません」

男性「へぇ。そうなんだ」

俺は咄嗟に嘘を付いた。
1度は見てもいいと言われてはいたが、見たと答えたら、怪しげな品ならば
ここでこの人に何かをされてもおかしくないかもしれないしな。嘘も方便だ。

俺は応接間に案内されると、ソファに座るように促される。
お茶を勧められて、取り留めのない話を10分くらいしただろうか。
男性が急に声色を変えて、俺にある質問をしたのだ。

男性「この箱の中身だけど、気にならなかったかい?」

俺「え?まぁ・・・気にはなりましたけど」

男性「だけど、見なかったんだろう?」

俺「・・・はい」

男性「見てみたいとは思わないかい?ある日、こんな怪しげな品を渡されたら、見てみたくなるだろう?」

俺「だけど、届け物を勝手に見るわけにもいかないですし」

何か試されているのだろうか、矢継ぎ早に質問が来る。

男性「言われなかったかい?1度だけなら見てもいいと」

俺「言われました」

男性「でも、見なかった?」

俺「もちろんです」

すると、彼は満足したのか、急に満面の笑顔になり、ソファに深く腰掛ける。

男性「この箱はね。少し特別な箱なんだよ。特別なね」

俺「そうらしいですね」

男性「特別な箱だけに、誰でも運べるものではないんだ」

俺「はぁ」

男性「この箱を運んだ人間はだから1度だけ見る権利が与えられる」

俺「なんだか不思議な話ですね」

男性「特別と言っても、魔法の箱とかじゃないけどね」

男性は口元に笑みを浮かべながら答える。
心なしか、その笑みは何やら人に不快感を与えるものだった。

男性「あ、そうだ。箱の中身が気になると言ってたよね?」

俺「はい」

男性「ならば見せてあげるよ。1度だけなら大丈夫なんだから」

まずい。話が変な方向になってきた。
俺はすでに1度見ているし、もう1度見たら・・・死ぬとかK田さん言ってたけど。

俺「いや、いいですよ。遠慮しておきます」

男性「どうしてだい?1度だけなら見られるんだ。これで帰るのは心残りだろう?」

彼の笑顔がますます不気味に見える。

俺「いや、でも・・・」

男性「君が運んできたんだ。1度だけなら問題ない。見ていないんだろう?」

俺「え・・はい・・・」

今さら見たとかもう言える空気じゃない。

男性「だったら見ていけばいい。それとも・・・君は見たのかい?いや、見てないと言ったから見てないんだろう。君は嘘を平気で付くような人間じゃないよね?K田さんがよこした人間なんだから」

ますます追い詰められていく。
こいつは、すべてを知っていて、俺をいたぶっているんじゃないだろうか。

男性「大丈夫。1度だけなら死にはしないから。ね?」

そういうと彼は箱の蓋に手をかけ、おもむろに蓋を開いた。

次回に続く―
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by atasakura | 2008-08-15 19:12 | 奇妙なアルバイト