元探偵が日常をだらだらとテーマに沿って書き綴る。旅行記になるのか、体験記になるのか、それはこれからの秘密だ。


by atasakura

<   2007年 10月 ( 12 )   > この月の画像一覧

K田さん事件簿①-6

こんにちわ。

それでは前回の続きです。

背後から近寄る不気味な呼吸音。
後ろを振り向こうと思うのだが、なぜか振り向けない。
別に特別な事ではなく、自分自身が恐怖心に包まれているからだった。

ゴクリと唾を飲み込む音がはっきりと耳まで聞こえる。

携帯をゆっくりと下ろし、後ろを振り向こうとした瞬間だった。
腰よりも上の辺り、胸よりやや下の背中に、何か冷たくとがった物が押し付けられたのだ。
衣服を通した肌に触れる冷たい感触が色々と俺に想像させる。

「だ・・・誰っすか」

「シュー・・・シュー・・・」

返事はない。

「なんか背中に当たってるんですけど」

自然と声が掠れ気味になるのは言うまでもなかった。
今までにも何度か危険な目に合う事もあったけど、
やはり死という言葉が頭を掠める時ほど怖い時はないのだ。

「俺をどうするつもり?」

精一杯の勇気を振り絞り質問してみる。

「シュー・・・シュー・・」

相変わらず返事はない。
コイツは喋る事が出来ないのだろうか。

「悪いんだけど、背中に当ててるものを離してくれないかな?」

俺がそう告げた途端に、背中にチクっと微かに痛みが走る。
どうやら、答えはNoという事らしい。

そのままお互いに動く事なく5分くらいが過ぎた。
いい加減に、緊張感を持ったまま、硬直状態でいるのは疲れる。
俺のそんな気持ちを敏感に察したのか、肩が軽く前に押される。
そのまま歩けという事なのだろうか。

俺が軽く一歩前に踏み出すと、再び背中に痛みが走る。

どうやら、それが正解らしい。

俺はゆっくりと、ゆっくりと前に進みだした。
相変わらず背中には何か冷たくとがったものが充てられている。
背後の存在が気になるが呼吸音と、頭部に当たる息から
俺よりも身長が高めの人物だというのが分かる。

こんな時にアクション映画の俳優なら、格好良く背後の人物を攻撃して
その正体を判明させるところだが、現実はそんな風に上手くいくはずもない。
俺はただの素人なのだから。

「後ろを向いてもいいかい?」

俺がそう言いながら、振り向こうとすると、手で頭を押さえられて
強制的に前を向かせられたかと思うと、軽く背中を蹴り飛ばされた。
どうしても後ろを向かせたくないらしい。

玄関まで来たところで、急に肩を抑えられて動きを止められる。
すると、そのまま動くなと言うかのように手で指示をされた。
それから1分ほどそこにいただろうか。
肩越しに手書きで書かれた紙が目の前に示された。
そこには、汚い字で「ここから出て行け。そして二度と戻るな」と書かれていた。

「無理だと言ったら・・許してくれないよね?」

再び背中にチクリと痛みが走る。

何をされるか分からない状況なので、この場は素直に従う事にした。
俺はそのまま振り向かないで、玄関のドアを開ける。

正体を見るのは、このチャンスしかない。
俺はドアの外に出た瞬間に背後を振り返った。

だが、そこには、すでに相手の姿はなかった。

軽くため息をつくと、俺は携帯を取り出し、K田さんに連絡をした。
[PR]
by atasakura | 2007-10-29 16:36

K田さん事件簿①-5

こんにちわ。

それでは前回の続きです。

あの家に舞い戻った俺は、家の中で人が倒れているのを発見した。
近づかずに、「大丈夫ですか?」と声をかけるが、反応はない。
日が入り込まないため、薄暗く、体が動いているのか分からない。
俺は慎重に歩み寄ると、 倒れている人影を見下ろした。

うつ伏せに倒れているのは男性で、あまり若さは感じない。
どうやら身体がかすかに上下しているのを見ると、生きているようだった。
「ふぅ・・」俺は安堵のため息を漏らす。
空家で遺体発見だなんて、何かと警察への説明が面倒だからだ。

俺は再び「大丈夫ですか?」と声をかけるが、やはり反応はない。

とりあえず仰向けに抱きかかえて起こすと、
気づいたのか、「う・・」と声が漏れる。
素早く男の全身に目を配るが、怪我をしている様子は無さそうだ。

「あ・・・」

完全に目を覚ました男が俺を見る。
年齢は50に差し掛かるくらいで、
白が入り混じった髪と、高そうな服が育ちのよさを感じさせた。
男の顔は、写真立てに飾られていた父親の顔だった。

(生きていたのか?)

だが、写真立ての父親は2人いるわけだから
K田さんから貰った写真に写っていた男が被害者だったのだろうか。

「大丈夫ですか?立てますか?」

「あ・・あぁ」

「どうして、こんな所に?」

何が起きたのか分からないのか、周囲を伺っている。

「あの・・・私はどうしてここに?」

「え?」

それだけ言うと、男は沈黙する。

「いや・・それはこちらがお伺いしたいです。
あなたは、この家に5年前まで住まれていた○○さんですよね?」

俺の問いかけに男は何か言葉を発しようとするが声にならないようだった。
少し頭を軽く振ったかと思うと、困惑した顔で男は言葉を発した。

「・・・・自分は誰なのでしょう?そしてあなたは?」

「え?どういう意味ですか?」

「分からないんです。自分の名前が出てこないんです」

もしかして記憶喪失なのだろうか、男は焦燥した表情でうなだれた。

「何か覚えている事はありませんか?住んでいた場所とか、なぜここにいたのかとか」

男は頭をふると「分かりません」とだけ答えた。
嘘を付いたり、隠したりしている様子はあまり見受けられない。

「とりあえず病院へ行きましょう。
なぜここで倒れていたのかは分かりませんが
身体のどこかに異常がありましたら、大変ですし」

「いや・・しかし・・大丈夫ですから」

「いやいや・・・倒れてたんですよ?」

「・・・・・・。」

家の中で倒れていた男が写真の男だったというのは
偶然にしては出来すぎているくらいで少し驚きを感じ得なかった。
とりあえず、家の中にあった写真立ての男は被害者ではなかったわけだ。
すると5人の被害者のうち、1人はK田さんの写真に写る男のほうなのか。

とりあえず、その辺の事情も詳しく聞き出したいのだが
記憶喪失が本当ならば、あまり期待は出来なさそうだ。
そろそろあまり深入りをしたくない気持ちが芽生えてきているのも事実。
この人の対応をしたら、K田さんに連絡をして、この件からは引き上げよう。

「すいません。いま、救急車呼びますので、そこにいてもらえますか?」

俺は居間の壁にもたれ掛かっている男に
声をかけると、携帯を取り出した。
救急車を呼ぼうとしたが、その前にK田さんに連絡を取る事にした。
あの様子なら、多少は呼ぶ時間が遅れても問題はないと判断したからだ。

コールすると、すぐにK田さんが電話にでる。

「どうした?」

「あのですね。ちょっと聞きたい事がありまして・・・」

「なに?」

「例の件で現場に来てるんですけど、そこでですね・・・」

俺がそこまで喋った所で、視線を背後にやると、男がいない。

「!?」

「どうした?」

「ちょっと待っててください」

俺は居間に戻り、確かめたが姿が見えない。
再び居間から通路に出て、受話器に口を充てた。

「どうしたのよ?」

「人が倒れていて、休ませてたんですけど、いなくなってるんです」

「人が倒れてた?」

「そうなんですよ」

俺がそこまで話した時だった。

シュー・・・シュー・・・

あの呼吸音が背後から響いてくる。

「・・嘘だろ?」

振り向かずに呟く。

人の気配とミシリと居間の畳が軋む音がした。

シュー・・・シュー・・・

再び背後に響く不気味な呼吸音が俺の未来を物語っているようだった。

次回に続く。


メッセを登録したいというメールを何通かいただきましたので
ここでご自由に登録してしまってください。
メールをいただいた方以外にもこんな管理人で
よければ登録してもいいという奇特な方もどうぞどうぞ。
メールで感想などもいただけると励みになります。

登録アドレスはこちらです→ aibon_angel@hotmail.com
[PR]
by atasakura | 2007-10-26 09:27 | 探偵物語

閑話休題

いやー。誤解って怖いね。

確かにね、俺は探偵してたし、今も副業でしてるさ。
過去にはそれなりの経験もしたし、危険も味わってる。

だけどね。

あくまでも私立探偵でしかないんです。
国家権力がバックについてるわけじゃないし
銃撃戦とかしてるわけでもないのです。

探偵としての経験談を披露してほしいと知人に言われて
引き受けた講師のお仕事ですが、
プログラム見たら会場が300人も入る場所じゃねーか。

たかだか数人程度の規模のお話かと思ったのに。

おまけにな。














































俺、現役のCIA諜報員とかじゃないから。

誰だ、プログラムにこんな嘘を印刷したのはー。

メッセを登録したいというメールを何通かいただきましたので
ここでご自由に登録してしまってください。
メールをいただいた方以外にもこんな管理人で
よければ登録してもいいという奇特な方もどうぞどうぞ。
メールで感想などもいただけると励みになります。

登録アドレスはこちらです→ aibon_angel@hotmail.com
[PR]
by atasakura | 2007-10-23 19:21 | 雑記

K田さん事件簿①-4

こんにちわ。

それでは前回の続きです。

家を思わず飛び出した俺は、後ろを見ずにそのまま走り抜けた。
どれくらいの距離を走ったのだろうか、一息ついたところで振り返ると
背後には日が落ちて暗闇が広がるだけだった。

冷静になると、あそこでもう少し踏みとどまり
相手を確認した方が良かったような気もするのだけど
万が一の危険を考えて逃げたのは正解だったかもしれない。

俺はポケットから、携帯を取り出し、そのままメモリーから
K田さん宛てに連絡を入れた。

「はい」

「K田さんですか?俺です」

「もう犯人分かっちゃった?」

「まだです。そう簡単に分かりませんよ」

「なんだ。期待したのに」

「ちなみに、この件はどうして新聞にすら載ってないんですか?」

「なんでだろうねぇ。気になるなら調べればいいじゃない」

「それとですね。例の家に行ったんですけど、先客がいましたよ」

「へぇ。」

「あの家は誰もいないんじゃないんですか?」

「いないよ」

「じゃ、誰なんですか?」

「それを調べるのが君の仕事でしょう?」

駄目だ、話しても埒があかない。のらりくらりと逃げられる。

「じゃ、自分で調べますよ」

俺が少し強い口調で電話を切ろうとすると、K田さんが言った。

「あーあー・・そうすねないでよ。大の男がすねても可愛くないよ」

「すねてません」

「しょうがないなぁ。じゃ、ちょっとだけ、ヒントを挙げるよ」

「あの家の中に入ったのなら、飾られてた写真たては見たろう?」

「ええ」

「渡した写真と違う箇所があったよね?」

「はい。家族の父親と思われる人物が一致してませんでしたけど」

「そこがキーになるんだよ。後は自分で考えようね。それじゃ」

そういうと、K田さんは電話を切りやがりました。
俺はその写真を頼りに、被害者の方が
勤めていた学校へと向かったのです。
直接、学校の中で、話を聞くのは色々と問題もあるので、
出てくる生徒に聞き込み。その結果、驚くべき事が判明した。

K田さんに渡された写真に写る父親。

家の中に飾られていた写真に写る父親。

そこの生徒が指し示した被害者は
K田さんに渡された写真に写る父親だった。
ということは、あの家に飾られていた写真は
被害者とされている人物とは別人ということになる。
じゃ、なぜあの家に飾られ、
そして被害者とされているのか意味が分からない。
隣人の主婦もK田さんの写真を被害者の父親として指した。

それならば写真立ての中央に写る人物は誰なのだろうか。

そして、なぜあの家族と同じ構図で、同じ場所で写っているのだろうか。
念のため、もう1枚の写真も見せたが、誰も心当たりはないようだ。

被害者は、近所付き合いは良かったようだが
それ以外の人付き合いはそれほどなかったようだ。

完全に足取りが途絶えてしまった。

家に出入りしていた女性の影も掴めない。

仕方ない・・・またあの家に行くか。
正直に言うと、あまり気は進まないが、話が進展しない以上は仕方ない。
念のため、自分の身を守るものとして、催涙スプレーなどを所持しておく。
また夜は、危険なので、日中にあの家に入ることにした。

そして、再びあの家の前に立つ。

俺は、再び玄関で鍵を使い、家の中に入る。

家の中は前回と変わりはない。
相変わらず人の気配は感じないが、前回と違う点が一箇所。

俺の目の前には、人が倒れていたのだ。
[PR]
by atasakura | 2007-10-22 18:49 | 探偵物語

K田さん事件簿①

こんにちわ。

前回の続きです。

事件現場の調査をしていた俺は、人の気配がある事に気づいた。
人が住んでいないはずの家で、俺以外の人はいるはずはない。
なぜなら、入り口の鍵は閉めてあるはずだし、他からはいる余地はない。
最初から潜んでいたのなら別だが、家の中の様子からして
誰かが潜んでいた気配はまったくなかった。

(誰か入ってきたのか・・?どこから?)

俺は高鳴る動悸を抑えて、リビングの出口にゆっくりと足を進める。
相手が俺に敵意を持っているのかすら
分からない状況なので壁伝いに慎重に近づく。
リビングの入り口近くの壁に背を預けると、
壁越しに人の気配が伝わってくる。
背を預けてる壁の裏側に当たる通路部分に誰かがいるわけだが、その姿は見えない。

かすかに聞こえてくるのは「シュー・・・シュー・・・」という呼吸音のようなものだけ。

声をかけるのもためらうほどの緊張感が全身を走る。

向こうも俺がリビング内にいる事に、当然のように勘付いてるはずで
何もしてこない事が逆に俺に恐怖を感じさせた。

「誰かいるんですか?」

俺は擦れた声で、呼びかけた。

だが、反応はない。

「いる事には気づいてます。この家の関係者の方ですか?」

それでも反応はない。壁越しに「シュー・・シュー・・」と
規則正しい呼吸音のようなものが聞こえるだけだ。
このまま向こうの出方を待とうとも考えたが、
いつになるか分からない相手の動きを待ち続けるほど、俺は暇じゃない。

思い切って、こちらからリアクションをかけようと俺が一歩足を前に踏み出した時だった。

ぐじゅっ・・・。

「うぉっ!」

俺は慌てて前に踏み出した脚を引いた。

偶然なのだろうか。

俺が前に足を踏み出した瞬間に、向こうも足を前に踏み出したのだ。
壁越しだから、距離にしたら1Mも離れていない。
まるでシンクロするかのように、壁越しの2人が足を踏み出したのだ。

俺の慌てた声を聞いたのか、向こうも飛び出すのを止めたようだ。

再び、「シュー・・・シュ・・」と呼吸音だけが聞こえてくる。

「誰なんですか?そこにいるんでしょ?」

相変わらず返事はない。

ただ、グシャと何かを踏み潰す音だけが返事として返って来た。
どうしてなのか分からないが壁越しに対峙しているだけで
ものすごく精神的に疲れるのは、この部屋のせいなのだろうか。

思わず俺は飛び出すタイミングを失ってしまった。

(悪いけど、このまま逃げさせてもらうよ)

正体を確かめたかったが、得体の知れない誰かと接触するよりは
この場はこのまま姿を消した方が無難なようだった。
そのまま静かに後ずさりをすると、リビングから外に繋がる窓をそっと開ける。

後ろを振り向くと、日が落ちてきたのか、
リビングから見える通路は闇に包まれていた。
かすかに差す光の加減で、通路の地面だけが見えている。

俺はそっと窓から出ると、一度だけ後ろを振り返る。

そこには、リビングの入り口に立つ、男性らしき人影が見えたが、足元しか見えなかった。

(うっ・・・)

思わず走り出し、入り口前の門から飛び出す。
俺の耳になぜか、あの呼吸音がこびり付いて消えなかった。

次回に続く。『見えてきた真相』
[PR]
by atasakura | 2007-10-19 18:28 | 探偵物語

K田さん事件簿①

こんにちわ。

またもや前回の続き。

K田さんより言われた”暇つぶし"
それは迷宮入りした事件を解決に導く事だった。
単なる暇つぶしに金を出す酔狂な人なんだけども、
イマイチ目的が分からない。
本当に彼の暇つぶしなのか、それとも真相が知りたいのか。

あの話しぶりだと、何かを知っていそうな気もするし
殺人だと断定した時の「本人に聞いたから」という言葉も気になる。
そこだけ聞くと、オカルトか、
現場に居合わせたのかどちらかしかないんだが。

ま、その辺は深く考えないようにする。
しょせん俺には、彼の奥底は見えやしないのだから。

調査の結果、いくつかの事が確認が取れた。

・5年前までは、問題の家族があの家に住んでいた
・事件発生前日に、何やら悲鳴のようなものが聞こえた
・いなくなる2ヶ月ほど前から、頻繁に20代後半くらいの女性が出入りしていた

情報が少なすぎる。これだけだと何がなんだか分からない。
5年も前の話だし、それほど周囲の人も気に留めてたわけじゃないから
記憶も曖昧だし、そこまで聞き出すだけでも一苦労だった。

頻繁に出入りしていたと思われる女性が気になる所だが
20代後半の女性というだけでは、あまりにも情報が少なすぎる。

この家に住んでいた家族達の交友関係を当たるのも1つの手ではあるが
別件で調査をしてる合間に、これをしてるわけだから、一ヶ月といわれても
予想以上に時間は少なかったりするのだ。

すでに5年が経過しているので、今さら現場を見ても何もないかもしれないが
やはり1度は現場を確認しておきたいろだ。
だが、新聞にも掲載されない事件という事は、
当然のように死亡確認もされていないはず。
すると、まだこの家の所有者は、被害者達のままなはずで
侵入しているところが誰かに見られれば、不法侵入で通報されかねない・・・。

ま、いいか。

その時はその時で考えよう。

K田さんが、この家の鍵を渡してくれたのも、入れということだろう。
彼の事だから、この家を購入済みとか、手は回してくれているに違いない。
俺は玄関の鍵を開けると、土足のまま家の中に入った。
もちろん日が差しておらず、薄暗いために、ペンライトは忘れない。
念のため、誰も入ってこないように開けた鍵を内側から閉めておく。

室内はかび臭い匂いに包まれていて、空気が澱んでいる。
人がしばらくは、この中に入っていない証拠でもある。
外の手入れの良さとは裏腹に、家の中はやや荒れ果てていた。

「外とはえらい違いだな・・・」

俺は現場とされるリビングへ向かい、中に足を踏み入れた。
まだ夕方とはいえ、事件現場に1人でいると思うと、
あまり気持ちいいものではない。
5年過ぎているわけだから、手がかりは無いに等しいとは思うのだが。

現場は、事件後に誰かに片付けられたのか、特に何も痕跡はなかった。
部屋の片隅にあるテーブルの上に置かれた写真立てに、
家族5人が楽しそうに写る写真があるだけだ。

「手がかりなしか・・・特に期待してたわけじゃないけど」

誰にともなく呟く。
振り返り部屋を出ようとした時に、俺はある事に気づいて
テーブルに再び近寄り、写真立てを手に取った。

俺はK田さんに、渡された写真とバックから取り出し見比べる。

「違う・・・」

K田さんに渡された家族5人の写真。

写真立てに飾られている家族5人の写真。

そこには1点だけ違いがあった。

それは、写真中央に写る父親が別人だということ。
他の4人は同じ人なのに、父親だけがなぜか違う。

俺はその写真立てをバックにしまい、部屋を出ようとした時に気づいた。

「―誰かいる・・・」

俺がいるリビングの外で動く人の気配を感じたのであった。

次回に続く。

メッセを登録したいというメールを何通かいただきましたので
ここでご自由に登録してしまってください。
メールをいただいた方以外にもこんな管理人で
よければ登録してもいいという奇特な方もどうぞどうぞ。
メールで感想などもいただけると励みになります。

登録アドレスはこちらです→ aibon_angel@hotmail.com
[PR]
by atasakura | 2007-10-17 17:59 | 探偵物語

K田さん事件簿①

こんにちわ。

それでは前回の続きです。

K田さんから頼まれた謎の事件。
一家5人が死亡したのであれば、大きなニュースになるだろうし
俺が知っていても、おかしくないはずなのだが・・・。

あまり彼の言葉に囚われていても仕方がないので
俺は現地調査に赴く事にしたのだが、聞いた事がない事件というのが
少し引っかかったので、国会図書館で過去の新聞を調べてみた。

だが、どこにもない。

K田さんが言うような事件なんて、どこにも掲載されていない。
遺体が発見されてないから、ただの行方不明扱いにされたのだろうか。
たとえそうだとしても、5人が消えたのなら、載せられて良さそうなものだが。

俺はとりあえず現地に飛ぶ事にした。

捜査の基本は警察も探偵もあまり変わりはない。
足で情報を稼ぎたいので、地方の図書館、警察署に赴いて事件の事を尋ねる。
それでもやはりそんな記録はないし、聞いた事もないという。

どういう事なのだろうか。

俺はそのまま事件現場に向かう事にした。

事件が起きたとされる家は、やや街の中心を外れた郊外の一軒家。
郊外とはいえ、それなりに住宅が並んでいる場所にその家はあった。
当たり前だが、誰も住んでいないらしく、日が落ちてきたにもかかわらず、
人の気配は感じられなかった。

家の周囲をぐるりと回ってみるが、特におかしな所はない。

俺は車に戻り、スーツに着替えると、そのまま近所の聞き込みを開始した。

「すいませんー・・」

「はい?どちらさまですか?」

隣の家の玄関から顔を出したのは、人が良さそうな中年の主婦だった。

「すいません。つかぬ事をお伺いしますが、隣の家の○○さんはご在宅でしょうか?」

「誰なんですか?」

「すいません。大変失礼しました。私はこういうものなんですが・・・」

俺は、胸元から名刺を取り出し渡した。
もちろんそれは探偵業の際の、擬装用の名刺であるのは言うまでもない。

「実はですね。私は○○さんの教え子なんです。卒業してだいぶ経つんですけど、
ようやく就職できまして、久しぶりに訪ねてきたんです」

「あー・・そうなんですか。昔はよく教え子の子たちが来てたみたいですよ」

被害者とされる一家の父親は、教師をしていたのを利用させてもらった。
この手の職業をしてくれていると、聞き込みが楽で助かる。

「そうなんですかー。学校でも好かれてましたから。
元気にしてるといいんですけどね。お留守みたいですけど」

「それがねぇ・・・急にいなくなっちゃったのよ」

「え?本当ですか?」

「そうなのよ。挨拶もなしで急だったからびっくり。近所付き合いもしてたのにねぇ」

「それはいつ頃の話ですか?」

「うーん・・・もう5年くらい前よ。それから、ずっとここは空き家だから」

「そうなんですか・・・」

顔を落胆と失望で滲ませる。

「だけど、その割には随分と綺麗ですね。庭も手入れされてるみたいだし」

「そうなのよ。誰かやってるみたいなのよね」

「誰か?」

「人はいないはずなんだけど、清掃会社でも雇ってるのかしらね」

5年もの間、空き家にしておきながら、清掃会社を雇うのは不自然だ。
ここに戻ってくる宛てがあるのならともかく、すでに死んでいるのだから。
もちろんそれも、K田さんの言葉が正しいとするのならばだが。

「そうですか・・どこに引っ越したのか分かりますか?」

「何分にも急だったから・・・・」

「そうですね。すいません」

「すごくいい先生だっただけに、ぜひ報告と挨拶をしたかったんですけどね」

「そうよね。すごく感じのいいご家族でしたから。でも・・・」

「でも?」

「あ・・いえ・・・ぺらぺらと喋る事でもないですから」

「そんな事を言わずに。先生の事を何か知ってるのなら何か聞かせてください」

「いやね。思い出したんだけど、いなくなる直前に大きな物音がしたのよ」

「物音?」

「そうそう。ガラスが割れるような音と悲鳴みたいなのが聞こえてね」

「え?それ大事じゃないですか」

「寝ぼけてたから聞き間違いかと思ったんだけど、急に出て行ったから、慌ててたのかねぇ」

とりあえず、その家族がここに存在していたのだけは間違いないようだ。
念のため、K田さんから預かった資料にあった家族の写真を何気なく
この主婦に見せたが、間違いないと確認が取れた。

事件は起きたのか、それとも事件そのものが嘘なのか。

次回に続く。
[PR]
by atasakura | 2007-10-15 16:30 | 探偵物語

K田さん事件簿①

今日はK田さん特集。
俺の日記には何度も登場してますが、今までの人生で
彼以上に不思議な人には、いまだに遭遇した事はありません。
恐ろしいほどの人脈の広さに、物凄い豊富な知識量とそれを生かす頭脳。
名前も本名か分からず、下手したら国籍すら日本ではないかもしれない。
見た目はアジア系なのは間違いないんですが。

外見は、イケメンでもなく、身長も普通。
極めて特徴的な部分はないのに、中身はモンスター。
一言で例えると、そんな感じの人かもしれません。

そんな彼とお知り合いになったのが10数年前。

今はどこへ消えたのか分かりませんが、現在は失踪中。
※ 俺の前からという意味で。

その彼に、俺が探偵になり、1年がすぎた頃にある話を持ちかけられました。

「あのさ。お前は探偵とかやるからには、推理小説とか好きか?」

「あー・・・まぁ、好きですね」

「どんなの読むんだ?」

「日本の作品をそれなりに」

「かーっ・・最近の若い奴は駄目だね。カーとかポーとか古典的な奴を読めよ」

「はぁ・・」

「まぁ、いいや。呼び出したのはそんな事を言いたいわけじゃないしな」

俺を呼び出したのは何か別件の用事があるようで
またバイトでもやらせるのかと少し身構えておりました。
すると、彼はバッグから大きめの封筒を取り出すと、それを俺に差し出しました。

「中を開けて読んでみろよ」

「なんですか。これ?」

「下手な推理小説なんかより、よっぽど面白いぜ」

俺が封筒を開封して中を見ると、
そこにはA4サイズの資料が同封されてました。
書かれている内容は、やや猟奇的な
殺人事件の詳細を記載した資料でした。
以下、事件の詳細。

・一家5人が『殺害』された。ただし遺体は見つかっていない
・生存者、目撃者共になし。
 ただし、事件前に不審な50代の男が目撃されている。
・現場には、犯人が使用したと思われる凶器が5本あった
・現場には、5本の傘が広げておかれていた。
・事件が起きたのは、5年前(当時の時間で)

遺体がないのに、どうして殺人と判断したのか気になったので
K田さんに聞いたのですが
「殺人だよ。間違いない」とだけしか言いませんでした。
「どうして分かるんですか?」と俺が聞き返すと、
「本人に聞いたから」とかわされました。

「俗に言う迷宮入りした事件なんだけどさ、お前が解いてみろよ」

「えーっ・・・無理ですよ。小説の世界じゃないんですから」

「いいからやってみろって。暇つぶしになるし、解けたら100万やるよ」

「でも・・・」

「探偵なんだろ?」

「でも、探偵は事件とか解きませんって」

「なんなら俺からの仕事の依頼という形にしてもいいから」

「分かりました。やりますよ」

「よし。じゃ期限は1ヶ月な」

どうせ解けるわけがありませんが、暇つぶしにはちょうどいい。

「あの、ちなみに、この事件なんですけど、ニュースとかで見た事ないんですけど」

「ないだろうな」

「?」

「乗らない理由は、自分で調べてくれ。それじゃ」

それだけ言うと、K田さんは帰っていきました。
俺は強引な押しに負けて、その事件を調査する事になったのです。
もちろん100万の報酬と、調査費用は
K田さん持ちが魅力的であったからだけども。

とりあえずその一家が、なんらかの事件に巻き込まれた可能性は
高いと睨んで俺は、調査費用をK田さんから受け取ると、
某県某市に向かったのだった。


メッセを登録したいというメールを何通かいただきましたので
ここでご自由に登録してしまってください。
メールをいただいた方以外にもこんな管理人で
よければ登録してもいいという奇特な方もどうぞどうぞ。
メールで感想などもいただけると励みになります。

登録アドレスはこちらです→ aibon_angel@hotmail.com
[PR]
by atasakura | 2007-10-10 14:04 | 探偵物語

前回の続き。

忙しくてたまらん。

コメント返事できてなくてすいません。今夜には・・・。汗

というわけで、本日の日記。

まずは前回のお仕事日記なんですが
全員が無断欠勤とか本当にありえないと思った。

上司にその事実を報告するも病気かもしれないし
疲れているのかもしれないから、そっとしてあげなさいとの言葉。

この状況からどうにか改善しろとか無理があるだろ。

おまけに相手の機嫌を損ねてはいけないとか言うお達し。

俺は考えました。無い知恵を絞ってどう対処したらいいのかと。

① こいつらの親にチクる。

上司は怖くなくても、親は怖いもんです。
なにしろ、この連中は親の後ろ盾があるから、
こんな風にしてられるわけですからね。
だけど、親がバカ親な場合は逆効果。

② 教育の名の下に、厳しい研修を実施。

研修の名の下に、陸の孤島にでも捨てて来ようかと思いました。
だけど、後で上にそれを報告されたら困るので却下。

③ 全員と仲良くして、1人ずつ改善させる。

極めて難しい。

④ 仕事する事の楽しさを教える。

どんだけ、時間がかかるんだ。

よし。決めた。

ようは俺が腹をくくればいいんだ。

別にこんな会社に未練はないしな。

というわけで、俺はその後はたまに口頭で
してはいけないなどと注意をするだけで、それ以上はしませんでした。
もちろん口で注意された程度で、こいつらが直るはずもありません。

俺は、それらのやりとりをすべて録画・録音しておきました。

そして、査定の時期に一気に彼らの評価を最低レベルにして上に報告。

当然のように、上はこれはまずいといいましたが、
「彼らは査定を下げられたくらいじゃ痛くないでしょ。金持ちなんだし」

「しかし・・・」

「俺は職務を全うしただけです。何かおかしな意見であればどうぞ。
ちゃんと会社の就業規則などにのっとった上での判断ですよ」

「別に俺の意見に文句があるなら解雇して頂いても構いませんよ。
ただし、不当解雇で訴えますけど」

「・・・・。」

俺の強硬な態度に上司も沈黙。
その書類を人事にそのまま出して、彼らは一気に査定が下がり
当然のように給料も駄々下がりしちゃいました。

もちろん痛くもかゆくもないでしょう。お金持ちなんですから。

だけど、プライドが痛く傷つけられたみたいなんですよね。
当然のように全員そろって俺の元に抗議に来ましたが、
俺はそれを完全に無視して、文句があるならちゃんと働いてくださいねと
俺は会社の規則に則っただけですよと全員を追い返してやりました。

訴えてやるとか、ただで済むと思うなとかほざいてましたが
「親に訴えて首にしますか?別に構いませんよ」と言ってやりました。
ただし、「俺に何か危害を加えるようなら、それなりの覚悟をしてくださいね」と伝えました。
自分は喧嘩を売るタイプではありませんが、売られた喧嘩は買います。そして必ず勝ちます。

念のために、彼らの親が経営している会社は事前に調査をしておきまして
色々な不正の事実はきっちりと抑えておきましたので、その事を告げると
もうそれ以上は追求してくる事もなく、すんなりと終わりました。意外とこんなもんです。

まぁ、不正してる事実を掴むために、K田さんに支払った調査料は半端なく痛くて
しばらくカップラーメンの生活になりましたが、それは気にしない。

とまぁ、こんな感じです。

次回は、「K田さんが頼んできた謎の調査」についてです。
[PR]
by atasakura | 2007-10-09 16:16 | 雑記

初体験

そういえば、以前の会社でのお話。
俺が働き始めて1年が過ぎた頃に、社内のある部門を看てみないかと
当時の上司にお前も独り立ちする時だからと突然言われたのです。
話を聞くと、その部門は管理者がおらず、管理されていない状態で
あまり仕事が上手く回ってるとは言いがたい部署らしくて、
俺をそれを管理して、改善して欲しいというのが仕事の内容でした。

いわゆる昇進という奴ですが、ぶっちゃけ仕事内容しか聞かされてません。
上司はめんどくさがりな人なので行けば分かると説明を省きやがりましたからね。

そんなわけで初めての部下を持つ事になりましたが、嬉しいけど緊張しますよね。

どんな人が部下に付くのだろうか。部下は5名だと聞いたけど
男の人なんだろうか、女の人なんだろうか。
俺より年上の人なのか、年下の人たちなのか。
優しいのか、厳しい人たちなのか、部の雰囲気はどうなのか。

そんな風に色々と考えちゃったりするんですよ。
俺が誰かの面倒を見るというのは、今までにない経験でしたから
前日の夜は興奮して意味もなく眠れなかったのを覚えています。

そして出社初日。

眠い目をこすりながら、下の人たちと上手くやらねばと
今後のアクションプランなどを考えて、
早く部下と馴染もうと意気込んで出社したのです。
もちろん部員5名の名前と経歴などは頭に叩き込んであります。

「おはようございます!」

俺が元気良く、部屋のドアを開けると、部員が3名しかいない。
まだ就業時刻ではないから、別に構わないんだけどさ。

俺は用意された自分の席に座ったけど、部内に漂う異様な雰囲気。
なんかね、雰囲気がちっとも明るくないし、空気も弛緩してないの。
緩みっぱなしとかじゃなくて、負け犬臭が漂うような部屋なんです。

おまけに就業時間を過ぎても、残り2人がきやがらない。

「あのー・・鈴木さんと、今泉さんは?」

やる気なさそうに爪切りをしている事務員の黒部さんに声をかける。

「さぁ?連絡ないから、今日も休みなんじゃないすか?」

「え?無断欠勤?」

「平たく言うとそうですね」

「いや、それマズイでしょ。連絡したの?」

「特に。この部署は休む時は、連絡しないで休むのが基本なんで」

「マジすか」

俺の驚きの声を無視するかのように、黒部さんは続ける。

「はい」

うわー・・・なんだこの部署。
社会人として無断欠勤なんて、あるまじきだろ。
社内調査表には、そんな事は書いてなかったぞ。

仕方ないので、俺が2人に連絡するも、連絡は繋がらず。
とりあえず3人に挨拶しようとしたが、軽くスルーされました。

どうなってんだ、この部署は。

仕方ないから、まずは仕事内容を把握するために
残りの3名、黒部さん、青木さん、橋本さんを招集する。

「あのですね。みなさんがしている仕事内容を具体的に教えて欲しいんですが」

「えー。どうしてですかー」

部で一番若い橋本さんが口を尖らす。

「いやね。部がどんな仕事をしているかは大まかには知ってるよ。
だけど、詳細な内容は部員の人じゃないと
仕事のやり方とかわからないじゃない?
だから把握しておきたくてね」

「めんどくさいですよー」

「じゃ、マニュアルとか仕事内容はドキュメント化はされてるの?」

「されてないですー」

「そう・・じゃ説明してもらえないかな」

「でも、今日はもう時間ないんで」

時間がないというが、時計はまだ13時。
終業時刻まで、まだ4時間以上はあるはずなんだけど。

「え?まだ時間あるでしょ?」

「今日はー。料理教室の日なんですよー。3時からなんですよね~。だからもう帰りたいんですけど~」

微妙に語尾を延ばす話し方にイラつきますが、ここは我慢。

「早退するの?仕事は遅延なく勧められてるの?」

「大丈夫ですよー。」

怪しい、本当に仕事してるのか怪しい。
てか、この部署はどうなってんじゃ。

「あ、そういうわけなんで帰りますね~。おっさきでーす」

とか言ったと思ったら、本当に帰りやがった。

俺が驚いて呆然としてると、最年長の青木さんが呟く。

「早く慣れた方がいいですよ。ここのやり方に」

あ、頭が痛い。

仕事を改善するより先に、この部員達の
人としての教育をしない事にはどうにもならん。
その日はくたくたになり帰り、俺の上司に実態報告をしました。

「あぁ。頑張ってくれよ」

「あの・・どうして、あんな状態な社員を雇ってるんですか?」

「色々と事情がある。ちなみにな、改善するだけじゃなくて、彼ら部員の機嫌を損ねないようにしてくれよ」

「え?どうしてですか?」

「お前に伝えてなかったけど、あの5人は全員が取引先のお偉いさんのご子息達だから」

すべて謎は解けた。

「は・・はぁ・・・」

駄目社員な上に、機嫌を損ねず、改善をしなくてはならない。

なんだ、この無茶苦茶なプロジェクトは。

そして次の日。



















全員が無断欠勤しやがった。


俺の受難は続く。くぅー。
[PR]
by atasakura | 2007-10-06 07:00 | 雑記